自己破産後の生活はどうなる?クレジットカードへの影響は?

目次

自己破産とは

破産とは、債務者が多額の借金などにより経済的に破綻してしまい、自分のもっている資産では全ての債権者に対して完全に弁済することができなくなった場合に、最低限の生活用品などを除いた全ての財産を換価して、全債権者にその債権額に応じて公平に弁済することを目的とする裁判上の手続きのことをいいます。

破産の申立ては債権者からもできますが、債務者自らが申し立てる破産を自己破産といいます。

自己破産をすると、周り近所にその事実が知られるのではないかと心配する方が多いのですが、そのような心配はまずないといっていいでしょう。

裁判所から破産手続開始決定を受けても戸籍や住民票に記載されることはないので、子供の就職や結婚などに影響が出ることはありません。

旧破産法の時代は、自己破産をした者は本籍地の市区町村役場の破産者名簿には記載されていましたが、破産者名簿は非公開なので第三者が勝手に閲覧することはできませんし、免責決定を受けると破産者名簿からも抹消されます。

この点については、平成17年から施行された新破産法により、破産者名簿へ記載する規定が変わり、現在では破産手続き開始決定が出た後に免責許可が下りなかった場合にのみ破産者名簿に記載されるように取り扱いが変わっています。

一般の方はよく破産の申立てをすれば無条件で借金がなくなると思っています。

しかし、手続き上は破産手続き開始決定が出た後に、裁判所から免責決定を受けることで初めて借金がなくなるのです。

したがって、自己破産の最終的な目的は、免責決定を得ることであるといっても過言ではありません。

とはいえ、実務上は自己破産の申立をすると同時に免責の申立てもおこないますので、破産手続き開始決定と免責決定とを分けて考えることはあまりなく、現実的にも破産手続き開始決定が出て、免責決定が出ないということはほとんどありません。

自己破産の申立てから免責決定までは裁判所や個々の事情によっても多少の違いはありますが、およそ3か月から半年程度です。

当事務所の地元の千葉地方裁判所では、特に問題がなければ申し立てをしてから3か月程度で免責決定が出ています。

この辺は各地の裁判所の運用や事案によって異なります。

これに対して、借入れ内容に問題があったり、破産者に一定程度の資産がある場合は申し立てをしてから免責決定までに半年から1年程度かかります。

なお、当事務所に依頼をしてから申し立てをするまでに3か月~半年くらいかかることが多いので、依頼をしてから免責決定が出るまでのすべてを合わせた期間は半年~1年くらいとなります。

マイホームは手放すことになる

自己破産は借金整理の最終手段なので、必要最低限の生活用品を除く全ての財産は強制的に換価されて、債権者に平等に分配されます。

よって、マイホームを所有している場合は、原則的に裁判所による競売手続きによって自宅を手放すことになります。

しかし、自己破産を申し立てても、すぐに家を追い出されるというわけではなく、実際には新しい買主が現れるまでは従来どおりに住み続けることができます。

実務上は、自己破産の申立てをしてから不動産が売却されるまでに半年~1年程度かかることも珍しくなく、競売手続きの中で買い手が現れなければ追い出されることはありません。

また、自宅を任意売却して新たな所有者と新規に賃貸契約を締結することで、自宅の所有権は失いますがそのまま住み続けることができる場合があります(これをリースバックといいます)。

自己破産は清算手続きなので、当然お金に換えることのできる物であれば強制処分されますが、債務者の最低限の生活は保証されているので、生活する上での必要最低限の家財道具は差押禁止財産として取上げられることはありません。

実務上は、およそ20万円以上の価値があるようなものでなければ配当に回ることはないので、よほど高価なものを持っていない限りは、自己破産をしても何も処分されないで済むケースが多いです。

よって、通常の生活で必要な家財道具や日用品が処分されることはまずありませんので、その辺の心配はしなくてよいと思われます。

官報への掲載と選挙権や資格制限

自己破産をした場合、裁判所から破産手続開始決定が出た時と免責許可決定をもらった時の合計2回は官報に掲載されます。

官報とは、政府が発行している新聞のようなものです。

しかし、一般人が官報などを見ることはまずありませんし、裁判所から勤務先の会社に連絡がいくようなこともありませんので、自己破産をしてもご近所や職場に知られる心配はほとんどありません。

また、自己破産をしても選挙権や被選挙権などの公民権は喪失しません。

しかし、破産者は司法書士、宅地建物取引士、生命保険募集人、警備員などの職に就くことはできなくなるなど一定の資格制限があります。

ただし、免責決定を受ければ、この資格制限もなくなります。

実務上、資格制限が問題になるのは相談者が警備員や保険外交員の仕事をしている場合です。

こういった場合は、自己破産ができないので任意整理や個人再生などを検討することになります。

ブラックリストへの登録

自己破産をすると、信用情報機関(JICC、CICなど)にいわゆるブラックとして登録されてしまいます。

この登録機関は、信用情報機関によって多少の違いがありますが、およそ5年~10年です。

このブラックリストに登録されると、その期間は銀行やサラ金からお金を借りたり、クレジット会社からカードの発行を受けることが困難となります。

しかし、日常生活で銀行や郵便局の口座を使ったり、公共料金の引き落としまでができなくなるわけではありません。

また、ブラックリストに登録されるのは自己破産に限った話ではなく、一定期間滞納した時点ですでに登録されているので、自己破産特有のデメリットとはいえません。

家族への影響

家族に内緒で自己破産ができるのか

裁判所から家族に連絡がいくことはない

自己破産をしても裁判所から同居家族に直接連絡がいくことはありません。また、司法書士に自己破産の依頼をした時点で債権者からの直接請求は止まるので、債権者から家族へ連絡がいくこともありません。

しかし、現実問題として、自己破産を裁判所に申立てる際は、同居家族の収入を証する書面(源泉徴収票や給与明細)などの資料の提出を求められることがあり、内緒のままでは書類の準備ができない場合があります。

よって、書類の準備さえできるのであれば、同居家族にバレずに自己破産できる可能性が高いといえます。ただし、無理に隠してあとでばれてしまうよりも、最初から正直に話をして家族で自己破産手続きを乗り越えた方がよい場合もあります。

なお、同居していない場合は、家族が連帯保証人になっていない限りは、自己破産をしたことが知られることはまずないといえます。

夫の借金を妻が返さなければいけないのか

妻に支払い義務はない

一般の方のイメージでは、夫婦の一方が借金をした場合、夫婦である以上はもう一方の配偶者が借金を返さなければいけないと思いがちです。

しかし、妻が夫の借金の連帯保証人になっていない限り、夫の借金を妻が支払わなければならない義務はありません。

民法761条には『日常家事債務』について夫婦の連帯責任を定めた規定があり、『夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をして、これによって債務が生じた場合、他の一方も連帯して責任を負う』と定められています。

ここでいう『日常家事』とは、食料や医療などの生活必需品の購入や家賃・医療費・教育費の支出などのことであり、夫が仕事上・職業上の都合でサラ金から借金したりギャンブル・遊興費のためにサラ金から借金したりする場合は、日常家事債務とはいえません。

また、土地や建物の売買なども、一般的に日常家事に関する行為とはいえませんし、借金の返済のために別のサラ金業者から借金をすることがよくありますが、これも日常家事に関する行為とはいえません。

サラ金やカード会社から借金をする際に『生活費のため』『養育費のため』と言って借りるケースがよくありますが、仮に実際にそのように使った場合でも、①サラ金やカード会社からの借金は一般的に非常に高金利であり取り立ても厳しいこと、②妻に夫の借金の支払を請求するならば、業者はきちんと妻と保証契約を締結しておくべきこと、③サラ金やカード会社からお金を借りるということは親戚・友人から借りるのとは行為自体の重みが違う、などの理由により、サラ金やカード会社からの借金は、その行為の客観的性質から見て、いかなる場合も日常家事債務には該当しないと考えられています。

よって、妻であるからといって夫の借金を支払う義務はありません。もし、法的な支払い義務がないのにも関わらず、取立てを続けてくる業者がいた場合は、すみやかに司法書士などの専門家に相談してください。

離婚すれは夫(妻)の借金の支払義務はなくなるか

保証人になっている場合は離婚してもダメ

そもそも、夫婦であっても原則的に連帯保証人になっていない限り、法的な支払い義務はありません。これに対し、連帯保証人になっている場合は、たとえ離婚をしても保証人としての責任は残るので支払義務があります。

よって、夫婦の一方が連帯保証人になっている場合は、離婚をしたからといって借金の支払義務がなくなるということはありません。

夫(妻)の死亡で相続人は借金を支払わなければいけないのか

3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄をすればよい

債務者である夫(妻)が死亡した場合は、生存中とは異なり連帯保証人になっているのかどうかにかかわらず、その相続人である妻(夫)や子供は借金を相続するので注意が必要です。

ただし、相続人は被相続人(亡くなった人)の死亡および借金の存在を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすれば借金の支払義務を免れることができます。

よって、夫(妻)が多額の借金を抱えたまま死亡し、他に目ぼしい財産もないような場合は相続放棄をするのがいいでしょう。

家族のした借金は他の家族に支払義務があるのか

保証人になっていないのであれば関係ない

もし、サラ金やカード会社から債務者の家族に請求があっても、連帯保証人になっていないのであれば親子・兄弟など家族の借金であっても他の家族に法的な支払義務はありません。

そもそも、貸金業者が支払義務のない親族などに対して支払請求をすることは、貸金業規正法に関する金融庁の事務ガイドラインで禁止されており、取立ての仕方によっては貸金業規正法の取立規制に違反することにもなります。

ですから、支払義務がないにもかかわらず債務者の家族が取立てを受けた場合は、すみやかに司法書士などの専門家に相談してください。

よく、債務者本人が可愛そうだからといって他の家族が借金を代わりに支払うことがありますが、本人がそれに甘えてしまい、再び借金を繰り返してしまうことが少なくありません。

ですから、本人のことを考えれば厳しいようですが本人の力で借金を返済させるか、それが無理であれば自己破産の申立てをさせる方が本人の更正のためになると思います。

子供(未成年)のした借金は親に支払義務はあるのか

子供の借金は親には関係ない

子供がいくら借金をしようとも、親が連帯保証人になっていない限り、支払義務は全くないので、親だからという理由だけで、サラ金やカード会社から子供の借金の請求を受けても、支払う意思がないことをハッキリと示しましょう。

貸金業規制法に関する通達では『法律上支払い義務のない者に対し、支払請求をしたり、必要以上に取立ての協力を要求したりしてはならない』と定めていますので、貸金業者がしつこく支払いを求めてくるようでしたら監督行政庁に対し、行政指導または行政処分の申立てをしましょう。

そもそも未成年者の契約は親の同意がない限り、あとから取消すことができるので、未成年者による契約を理由に取り消しをする場合は、債権者に対して、金銭消費貸借契約を取消す旨の内容証明を送りましょう。

未成年者であることを理由に契約を取消した場合、契約は初めから無効だったものとみなされ、未成年者は『現に利益を受ける限度』で貸金業者に返還すればよいとされています。

例えば、お金を遊興費やギャンブルなどで使ってしまったのであれば、未成年者は返還する義務はありません。しかし、当然手元に残っているお金や生活費に使った分は業者に返さなければいけません。

そもそも、未成年者にお金を貸すこと自体が、貸金業規制法の過剰貸付けに該当するので監督行政庁に苦情申立てをすることも可能です。

仕事への影響

自己破産をすると会社にばれてしまうのか

通常であれば知られることはない

自己破産をしても裁判所から会社に連絡がいくことはないので、通常であれば会社に知られることはありません。

自己破産の申立て後であれば、債権者から会社に取り立ての連絡がいくことはありませんが、司法書士などの専門家に依頼をしないで自分で自己破産の申し立てをしている場合は、裁判所に申し立てをするまでは債権者の請求が止まりません。

そのため、司法書士などにお願いをしていない場合は、債権者から会社に連絡がいくことがあるので、それがきっかけで会社に知られる可能性があります。また、すでに判決などを取られてしまっていると、給与を差押えされることがあり、そうなれば会社に知られてしまいます。

そういった不安があるのであれば、司法書士などの専門家に自己破産の手続きを依頼することを検討してみるのがいいでしょう。

司法書士に依頼をした場合、直ちに全債権者に受任通知書を送ります。受任通知が届いた以降は、債権者が債務者本人に直接請求をすることは禁止されているので、会社にばれることもまずありません。

自己破産をすると会社を辞めなければいけないのか

当然、辞める必要はない

自己破産をしても戸籍や住民票に掲載されることはないので、通常であれば会社に知られることはありません。もし、自己破産をしたことが会社に知られてしまっても自己破産を理由に会社をクビにすることはできませんし、辞める必要も一切ありません。

しかし、現実問題として自己破産が会社に知られてしまうと、職場に居づらくなって退職してしまうケースがあります。

給料を差押さえられることはあるのか

差押えられることはあるが全額が取られるわけではない

民事執行法では差押禁止債権として給料・賃金などを規定しており、これらの債権については1/4までしか差押えを認めていないので、残りの3/4については差押えをすることはできません。

また、標準的な世帯の必要生計費を勘案して、政令で金額(33万円)を定めているので、それ以下は1/4しか差押えられないように定めていますが、債務者がそれ以上の給与を得ているのであれば、それ以上の分については全額差押えることができます。

しかし、破産法の改正により自己破産の開始決定後は給与の差し押さえなどの強制執行は停止されるようになりました。管財事件では自己破産の開始と同時に強制執行が失効するため、破産手続きの開始後すぐに給与の全額を受け取ることができます。

これに対して、同時廃止事件では、自己破産の開始と同時に強制執行が中止されますが、免責が確定するまでは強制執行が失効しないため、破産手続き中は差し押さえられた給与分を受け取ることができません。

ただし、免責許可が確定すれば強制執行が失効するので、支払いが留保されていた給与分については、免責確定後にまとめて支払われます。

自己破産をすると退職金はどうなるか

退職金も財産とみなされる場合がある

通常、退職金に関しては、将来もらえるであろう見込み額の8分の1程度の金額を債権者の配当にまわすように指示されます。もちろんこの場合でも、実際に会社を辞める必要はありません。

また、裁判所から指示されたお金を債務者が用意することは極めて困難ですので、実際のところは、裁判所に一定の猶予期間をもらってその間に用意したり、債務者の親族に借りたりすることになるでしょう。

いずれにせよ、退職金の取扱いについては裁判所の間でも多少の違いがあるので事前に調べておきましょう。

自己破産をすると職業に制限はあるのか

選挙権はあるが一定の資格や職種に制限がある

自己破産をしても選挙権や被選挙権などの公民権は喪失しませんが、破産者には以下のような資格制限があるので、既に以下の資格や職種に就いていた人が破産をすれば、その資格や職を失うことになります。

しかし、破産者が免責決定を受ければ、この資格制限もなくなるので自己破産をしたからといって一生資格制限が続くわけではありません。

【資格制限の代表例】

➡ 弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・行政書士・宅地建物取引主任者・株式(有限)会社の取締役・警備員・生命保険の外交員など

取立て屋が職場にまで来るのでとても迷惑しています

勤務先への取立ては貸金業法違反

サラ金業者などが、勤務先にまで借金の取立てをしに来るのは貸金業規制法21条(取立て行為の規制)違反になりますし、仕事に影響がでるようでしたら業務妨害罪が成立します。

また、監督行政庁に対して、貸金業者の業務停止・登録取消しを求める行政処分の申立てをすることもできるので、違法な取り立てをされた場合は、司法書士などに専門家にご相談ください。

保証人への影響

自己破産をすると保証人に迷惑がかかるのか

保証人には正直に事情を話す

債務者本人が自己破産をして免責されたとしても、保証人の支払い義務は残ったままです。よって、連帯保証人がいるのであれば、今度はそちらに借金の督促が集中することになります。

保証人に迷惑をかけられないといって自己破産を躊躇しても何の解決にもなりません。もし、自分が自己破産をするのであれば、保証人に正直に話をして、その保証人を含めた債務整理を考える必要があります。

中には保証人も自己破産せざるを得ない場合もありますが、とにかく大切なことは保証人に対して誠意をもって全てをきちんと説明するということであり、そのような義務が債務者本人にはあるのです。

友人が勝手に健康保険証を持ち出して借金をした場合

名義の無断使用なので支払い義務はない

お金を借りるには、貸主と借主が金銭消費貸借契約を締結します。

しかし、今回の場合は名義が無断で使用されているので、そもそも法的に有効な金銭消費貸借契約が成立していないので、当然支払い義務はありません(これは、友人に限らず第三者に盗まれた場合も同様です)。

よって、取立てを止めない貸金業者に対しては、友人が勝手に健康保険証を利用してあなた名義で借金をした事情を説明したうえで、自分には支払い義務がないと返済を拒絶することができます。

しかし、貸金業者が契約の有効性を争ってくることもあり、そういった場合は最終的に裁判所で支払い義務があるのかどうかを判断してもらうことになります。

これに対して、友人に名義貸しをしていたなど、自分が契約上の借主になることを事前に承諾していたり、返済は友人がおこなうことを約束したうえで、自分が借り入れをした場合は当然に契約上の借主である自分自身に支払い義務があります。

騙されて保証人になった場合

騙された相手によって異なる

貸金業者に『保証人としての責任はないから形だけ署名して欲しい』などと言われて保証人になったような場合にはサラ金業者との保証契約の無効または取消しを主張して保証人としての責任を免れることができる場合があります。

しかし、友人に『絶対に迷惑をかけないから保証人になって欲しい』などと言われてサラ金業者と保証契約を締結した場合は、保証契約を取り消すことはできず、保証人としての責任を免れることはできません。これは、保証人となる契約は保証人と貸金業者との契約だからです。

勝手に保証人にされた場合

勝手に保証人にされても支払義務はない

保証契約は貸金業者との契約ですので、業者に対してあなた自身が連帯保証人になる旨の意思表示をしていなければ支払義務はありません。

通常は、契約書や借用書の連帯保証人欄に署名・押印することによって保証契約は成立しますが、場合によっては、貸金業者が連帯保証人になるかどうかを電話で聞いてくる場合があります。

このような場合はたとえ電話であっても連帯保証人になることを承諾したのであれば、法的には保証人としての責任を負う可能性があるので注意して下さい。

ただし、貸金業規正法では保証契約を締結した時は、契約書面を当該保証人に交付しなければならず、書面の交付がない場合は100万円以下の罰金に処せられます。

いずれにせよ、連帯保証人を頼まれた場合は、はっきりと断るのが一番安全といえます。

保証人として支払ったお金を債務者から返してもらえるか

求償権を行使すれば本人に請求できる

連帯保証人には『求償権』というものがあり、自分が債務者に代わって貸金業者に返済した場合は、主たる債務者に対してその分のお金を返してもらうことができます。

また、自分のほかにも連帯保証人がいるようなケースでは、連帯保証人の頭数で割った分について他の連帯保証人に請求できます。

しかし、現実的には主たる債務者や他の連帯保証人に資力がない場合がほとんどなので、実際に保証人が返済した分のお金を返してもらうのは困難といえるでしょう。

なお、主たる債務者が自己破産をしている場合は求償権を行使してお金を回収することはできません。

保証人も支払えない場合

保証人も債務整理をする必要がある

主たる債務者が返済を滞れば、保証人に請求がいきます。その際に、保証人も支払うことができないのであれば、保証人自身も債務整理を検討する必要があります。

なお、債務者が自己破産をしても保証人には影響がありません。その際に保証人に支払能力がないと、最終的には保証人も自己破産をしなくてはいけなくなる場合があります。

自己破産のデメリットについて

日常生活への影響

一般の方は、自己破産に対して非常に暗いイメージを持っているのが通常です。

自己破産をすると戸籍に記載されてしまうのではないか、公民権が剥奪されてしまうのではないか、子供の進学に悪影響が生じるのではないかなど、自己破産に対してマイナスのイメージを持っています。

しかし、自己破産をしても戸籍に記載されることはありませんし、選挙権も被選挙権もなくなりません。もちろん、子供の進学に影響を与えることはありません。

なお、旧破産法の時代は、破産手続開始決定が確定すると裁判所から破産者の本籍地の市区町村役場にその旨が通知されて破産者名簿に記載されていました。

しかし、平成17年の新破産法の施行により、免責決定が出た場合には破産者名簿へ掲載されない取り扱いになりました。

万が一、免責決定が出なかったとしても、社会生活の中で市区町村発行の身分証明書の提出を求められることは非常に少ないので、実際に問題になることはほとんどないといえます。

また、自己破産をしても会社を辞める必要はなく、これは公務員であっても同様です。

ただし、すでに裁判を起こされて判決などを取られていると、債権者からの給与の差押えされる可能性があり、その場合は勤務先に借金を滞納している事実が知られてしまいます。

そういった場合は、会社に居づらくなって退職せざるを得ない場合も中にはあるようです。

自己破産をすると債権者が自宅に押しかけてくるとか、家財道具にベタベタと差押えの赤紙が張られてしまうというイメージをお持ちの方も多いですが、実際にはそういうことはありません。

といいますのも、債権者は自己破産の申し立てによって取立行為が禁止されますし、債務者の生活に欠くことができない家財道具は法律により差押えが禁止されているからです。

では、自己破産による実際の不利益には何があるのでしょうか。

まず、第一は、破産情報が信用情報機関に登録されることです。一般的にブラックリストといわれているものです。

これにより、破産者本人は当然として、同居の家族がクレジットカードをつくることができず、クレジットを利用することができなくなります。

しかし、信用情報機関へは3ヶ月ほどの延滞でも登録されるので、長期に延滞している人は自己破産しなくてもすでに登録されている可能性が高いと思われます。

最近、問題になっているのが、ヤミ金業者から破産者へのDMによる勧誘です。これは、自己破産をすると破産者が官報に掲載されるからです。

一般人が官報を見ることはまずありませんが、ヤミ金業者はその情報を元に破産者へDMを送り、再び、破産者を多重債務者に陥れようと勧誘してきます。

なぜならば、一度、自己破産をして免責を得ると、その後7年間は自己破産することができなくなるからです。

賃貸借契約への影響

アパート・マンションや借家などの賃借人、借地人が自己破産をした場合には、賃貸人から追い出されてしまうのではないかとの不安を抱いている方もいらっしゃると思います。

以前は、破産が賃貸借契約の解除事由になっていましたが、民法の改正によりこの規定は削除されました。よって、現在では自己破産をしても家賃を滞納していない限り、退去させられることはありません。

資格制限

自己破産をするとさまざまな資格制限があります。たとえば、弁護士・司法書士・税理士などの資格を失うことになったり、会社の役員の資格を失うなどです。

また、保険の外交員や証券外交員など、他人の財産を預かり、または管理する業務を一定の資格の下に行っている場合には、自己破産によってその業務を禁止される場合があります。

ただし、この資格制限も免責決定と同時に復権するので、自己破産をしたからといって永久に資格制限がされるわけではありません。

転居等の制限

破産者に一定の財産があるなどして破産管財人が選任された場合は、破産者は裁判所の許可を得なければ転居や旅行をすることができません。これは、破産者の逃走や財産隠匿行為を防止するためです。

実際には、一時的な外出ではなく相当期間にわたり居住場所を離れる場合に許可が必要となります。

しかし、実務的には、合理的な理由があれば問題なく許可が出されますので、債務者にとっては特に不利益になることはないといえます。

なお、これらの制限はあくまでも管財事件の場合であって、自己破産の9割を占める同時廃止事件の場合は転居等の制限はありません。

また、破産管財人選任事案では、郵便物が破産管財人に配達されることになります。

これは、債権債務の調査のためなので、破産財団に関係ないものについては破産管財人から受け取ることができます。

住宅の取扱い

自己破産を考えている方の中には、『マイホームだけは手放したくない』と思っている方が非常に多いです。

自己破産をすると、マイホームは処分されてしまいますので、どうしてもマイホームを手放さずに債務整理を行いたいと考えている方は個人再生の利用を検討する必要があります(ただし、厳しい要件があります)。

もっとも、自己破産を申し立てからといって、直ちに引越しをしなければならないということではなく、破産管財人が住宅を処分するまでの数ヶ月間は従来どおり住み続けることができます。

また、住宅に抵当権などの担保が登記されている場合で、その担保額が住宅の時価をはるかに上回るとき(1.5倍程度という取扱いが多い)には、他に価値のある財産がなければ破産管財人が選任されることはなく、同時廃止事件として処理されることが多いです。

ただし、時価の認定方法(固定資産税評価証明書、地元の不動産業者の査定書など)、被担保債権がどのくらい時価を上回っていれば同時廃止が認められるかなどの運用は、各地の裁判所によって異なりますので申立前に確認しておくべきでしょう。

この場合、債務者が債権者の協力を得て任意売却するか、債権者の競売申立てにより住宅が他の第三者の手に渡るまでは、債務者が住宅に居住することが可能であり、その間は住宅ローンの支払いをせず、引越しを行うための金銭的な準備もある程度行うことができます。

保証人への影響

自己破産の申し立てをして破産手続開始決定・免責決定を受けても、保証人には何の影響も及ぼしません。したがって、保証人は債権者から保証債務についての追求を受けることになります。

しかも、保証契約では債務者の破産申し立てが期限の利益喪失事由とされていることが多く、期限の利益のない保証債務が現実化することになり、自己破産の申立てにより、保証人についても今後の対応を検討する必要があります。

保証人が支払不能であったり、収入が乏しく支払いが困難な状況にあれば、保証人についても債務整理が必要な場合があります。

しかし、特にクレジット会社に見られる傾向ですが、債権者は必ずしも保証人に対して一括請求を迫るわけではなく、従来どおりの割賦弁済金を保証人から支払うことを条件として一括請求をしないことも少なくありません。

【自己破産のデメリット一覧】

☑ 信用情報がいわゆるブラックになる

☑ マイホームを失う

☑ 一定の資格制限

☑ 官報に掲載される

☑ 連帯保証人が要る場合は保証人に請求がいく

☑ 転居の制限(管財事件の場合)

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